<男子>オーストラリア代表を徹底分析! Vol.2 スタッツ編 その1:ゲーム展開

今回は、オーストラリアがどのようなゲーム展開で得点し、強豪ベルギーを振り切ったのか、ゲーム展開から読み解いていきます。

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この試合を見て欲しい!!

昨シーズンで一番熱い試合、
2019年FIHプロリーグ決勝戦の対ベルギー戦に私たちは注目しました。
世界ランキング1位と2位のライバル同士の最終決戦で、とても見応えがある試合です。
この試合がどのような内容だったのかを振り返ってみましょう。

試合の動画はこちら!

2019.6.30 FIH Pro League オーストラリア対ベルギー

https://fih.live/

【アクセス方法】HOME > FIH Pro League Men > 2019.6.30 Australia vs Belgium

アムステルダムのワーグナースタジアムで行われたFIHプロリーグの決勝で世界ランキング1位のベルギーを3-2で破り、オーストラリアが初優勝を飾った。
オーストラリアの#25ミットン, #22オーグルビー#13ゴーヴァーズ の前半の3得点がオーストラリアに勝利をもたらしたが、ベルギーの#25ルイパート#16ヘンドリクス の後半の2得点によりスリリングな終盤となった。

前半のオーストラリアは別次元で、守備の要である#4ヴァンドーレン を怪我の負傷交代で失ったベルギーを圧倒した。#4ヴァンドーレン を失ったことは既にキャプテンのブリエルズ を欠いていたベルギーにとって致命的だった。

前半9分、オーストラリアは#12ウェット が中盤でボールを奪うと、鮮やかなショートカウンターを見せ、最後は#25ミットン が押し込み先制した。また、第1Q終了直前に#22オーグルビー のロケットのようなリバースヒットでリードを広げた。
ベルギーは第2Qに持ち直し、オーストラリアのキーパーの#24ロヴェル から2つの好セーブを引き出したが、得点を追加し、さらにリードを広げたのはオーストラリアの方であった。
#25ミットン がペナルティサークル内でファールを受け、ビデオ判定の結果ペナルティストロークとなり、#13ゴーヴァーズ がこのチャンスをしっかりと決めた。

ベルギーは第3Qに続け様にペナルティーコーナーを獲得しオーストラリアにプレッシャーをかけると、遂に第3Qの終わりに反撃を開始する。
#25ルイパート のペナルティーコーナーからのドラッグフリックで1点を返し、#16ヘンドリクス の終了3分前のさらなる1点でオーストラリアを追い込んだが、一歩及ばず、試合は3-2でオーストラリアの勝利に終わった。

スタッツデータを読み解く

テレビでのサッカー観戦でよく目にする両チームのシュート数やポゼッション率などのスタッツデータを、当クラブのアナリストチームが作りました。
そのデータから、どんなゲーム展開だったのか読み解いていきたいと思います。

スタッツ

オーストラリアのポゼッション率、23m侵入数、サークル侵入数、ペナルティコーナー数は、ベルギーを大きく下回っている。特に、被ペナルティコーナーは10本とかなり多い。ペナルティコーナーはトップレベルになると3本に1本の確率で点が入ると言われ、もう1、2点を決められていた可能性があった。
対して、オーストラリアのフィールドシュートは8本で、そのうち2本が決まり、決定率25%であった。

ペネトレーショングラフ

ペネトレーショングラフは、1試合における相手陣地への侵入の深さと時間を表している。青色がオーストラリア、オレンジがベルギーである。この時間軸は動画再生時間をそのまま表示しており、ケガやペナルティコーナーの時間停止も時間に含まれているので注意いただきたい。
このデータをみると、1試合の流れを大まかに掴むことができる。
1~2Qはオーストラリアが試合を支配し、相手陣地でプレーする時間が長い。反対に3Qはほとんどの時間をベルギーが主導権を握っている。これは3点リードを得ているオーストラリアが守りにシフトしたためにベルギーの攻撃が増えたと考えられる。
4Qはオーストラリアの攻撃が再び多くなるが、ボール保持時間が短いままである。これは失点のリスクを下げるため、できるだけ自陣でボールを持たない戦術を使っていると推測できる。

得失点シーンを分析してみた

次に、ホッケーは相手より1点でも多く決めれば”勝ち”というゲーム特性を持っていることから、得失点シーンに注目して分析していきたいと思います。

1-0 (1得点目)電光石火のショートカウンター

1Q 6:43 AUS #25ミットン フィールドシュート

中央50yd付近、オーストラリア#12ウェットン がベルギーの中央#26ウェグネス への縦パスへの見事なインターセプトを成功させる。
同時にオーストラリアのFW#13ゴーヴァーズ、#25ミットン、#29ブランド の3人が全力でベルギーゴールに向けて駆け上がり4対3の状況を作る。
右FW#29ブランド へ繋ぎ、相手DFを引き付けサークルインからシュート。一度ベルギーGKに弾かれるも3人のフリーマンが出来ており、ファーサイドのFW#25ミットン が確実に押し込みゴール。
オーストラリアのショートカウンターの怖さが分かるシーンであった。

2-0 (2得点目)渾身のリバースヒット炸裂

1Q 13:46 AUS #22オーグルビー フィールドシュート

オーストラリアはベルギーの攻撃に対してライン低めで数をかけて守る。
自陣25yd付近でクリアボールを拾ったオーストラリアはシンプルに前線へパスを繋ぎカウンター攻撃を仕掛けサークルインに成功した。
ベルギーはGKも入れてオーストラリアより2人多い8人がサークル内にいたが、ボールウォッチャーとなり上がってきたオーストラリア選手に対応できていなかった。サークル内で細かくパスを繋ぎ、最後は#22オーグルビー がリバースシュートでフィニッシュ。
3回の縦パスでサークルまでボールを運び、オーストラリアのパワフルなカウンター攻撃が機能したゴールであった。

3-0 (3得点目)守から攻への素早い切り替え

2Q 13:50 AUS #13ゴーヴァーズ ペナルティストローク

オーストラリアの自陣中央25yd付近からの長い縦パスは一度はベルギーに奪われたものの、オーストラリアFW#22オーグルビー、#25ミットン がペアディフェンスで高い位置でボールを奪取。攻撃へ素早く転じ#22オーグルビーがベルギーDF#25ルイパート、#26ウェグネス の間を縫ってスペースへスルーパス。これをサークル内で受けとった#25ミットン がベルギーの悪質なタックルを誘ってペナルティーストロークを獲得した。#13ゴーヴァーズ がペナルティーストロークを冷静に右隅へ決め追加点を決める。

3-1 (1失点目)痛恨の判断ミス

3Q 13:47 BEL #25ルイパート ペナルティコーナー

3点リードしたオーストラリアは自陣30yd付近までラインを下げ、ベルギーの猛攻に耐えていた。
しかし、ベルギーの右サイド65yd付近から直接サークル内にいるベルギーFW#18プラネファウクス へ向けたスクープが通る。この競り合いをオーストラリアDF#2クレイグ が処理を誤り、この日8度目のPCを献上。
ベルギーのフリッカーは3人おり、この試合でこれまでフリックを打った回数は、#16ヘンドリクス(4本)、#27ブーン(2本)、#25ルイパート(1本)という順となっている。
オーストラリアは1-3の陣形で、守備の1番騎が本日一番多く打っているベルギー#16ヘンドリクス を潰しに行く。しかしその予想は外れ、#25ルイパート にパスが渡り、そのままフリックで決められ、失点を許す。

3-2 (2失点目)後手に回ったディフェンス

4Q 12:00 BEL #16ヘンドリクス  ペナルティコーナー

ベルギーの猛攻に対して、引き続き自陣30yd付近を固めて守るオーストラリア。ベルギーは左サイドからのドリブルでサークル侵入を試みる。
そのドリブルをオーストラリアのDF#23ビール がファールで止めたものの、ベルギーFW#32コシンズ の素早いリスタートでゴール前へのセンタリングを許してしまう。そのセンタリングがオーストラリアDF#11オケンデン に当たってしまいペナルティコーナーの判定。
「ファールした後、5yd動かさずにボールがサークルインしているのでは?」というオーストラリアが主張するが判定は覆らず。ベルギーのフリッカーは先ほどと同じ#16ヘンドリクス(4本)、#25ルイパート(2本1ゴール)
それに対しオーストラリアは2-2の陣形で守るも、ベルギー#16ヘンドリクス がこの日5度目の正直で鋭いフリックを左隅へ沈め、スコアを3-2の1点差に迫る。

まとめ

今回はゲーム展開を中心に見てきました。
そこから明らかになったことは、オーストラリアの試合巧者という側面です。

結果は、3-2でオーストラリアが勝利しましたが、スタッツデータを見ると、前半はオーストラリア優勢、後半はベルギー優勢の展開だったことがわかります。
ベルギーも多くのチャンスを生み出し、ベルギーが勝っていてもおかしくなかった試合でした。

この試合のハイライトは、2Q最後のペナルティストロークによる3点目であり、ここが勝敗を決定づけた最大要因だと考えています。
2Qからの流れがベルギーに傾きかけているところで、ベルギー自らのミスによりペナルティストロークの機会を得て、オーストラリアは3点リードを得ました。
ホッケーは野球やバスケットボールと異なり1点ずつしか得点が入りません。そのため、残り30分で3点差をひっくり返すのは困難と言われています。

実際に、後半のオーストラリアのペネトレーションデータを見る限り、ボールの保持時間を減らし、できるだけ早く相手陣地にボールを送るようなリスクを回避するプレーが見受けられ、リードを守り切るスタイルで戦っていることがわかります。
技術、戦術レベルの高さだけでなく、スマートな戦い方ができるオーストラリアは日本にとって大きな壁となるでしょう。

次回は、さらに踏み込んで「戦術観点」からオーストラリアの特徴とオーストラリアが勝てた要因についてご紹介していきます。

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