<女子>アルゼンチン代表を徹底分析! Vol.1 サマリー編

ちょうど一年後に東京オリンピックが開催されます。
ホッケー日本代表の対戦相手がどのようなチームなのかご存知でしょうか?
おそらく、ホッケー愛好者の中でも知らない方がほとんどだと思います。
対戦相手のことを知っていれば、オリンピックのホッケー観戦を2倍、3倍、いや10倍と楽しめるはずです。
そういう想いから、「オリンピック出場チームを徹底分析!!」というテーマで、過去の試合を独自に分析し、日本の対戦相手を紹介していく企画を始めました。
当記事をきっかけにして、ホッケーに関して少しでも興味を持っていただき、来年のオリンピックが待ち遠しくなっていただければ幸いです。
今回の分析対象は、世界ランキング2位の「女子アルゼンチン代表」です。

まずは、サマリー編として、強豪アルゼンチンのホッケーの特徴と、オリンピックで対戦する日本の戦い方について、ギュッとコンパクトにまとめてご紹介していきます。

アルゼンチンを徹底分析! 記事一覧

女子アルゼンチン代表ってどんなチーム?

現在オランダに次ぐ世界ランキング2位の女子アルゼンチン代表チーム。東京オリンピック2020では日本女子チームと第4戦目に対峙するチームである。
チームの愛称は”Las leona(雌ライオン)”で、劣勢に見えても粘り強く戦うスタイルからこの愛称が付いた。
国際試合でも輝かしい実績を誇るホッケー強豪国であり、2000年シドニー五輪から4大会連続メダル獲得、W杯2002・2010優勝、世界ランク上位6カ国で戦うチャンピオンズトロフィーでは直近10大会で6回優勝・2回準優勝を遂げている。
4位に甘んじた昨シーズンのプロリーグ2019では、予選の多くの試合でロースコアで勝利を収めており、得点数は4位であるが失点数は2位ということからも、堅守のチームということが分かる。
また、FIH プレイヤー・オブ・ザ・イヤーでは過去20年で延べ10人が最優秀選手に選出され、若手の部(18〜25歳)でも延べ6人が最優秀選手に選出されており、優秀な選手を多く輩出している。

女子アルゼンチン代表の特徴

2020年FIHプロリーグ女子のアルゼンチン対オランダを元に、アルゼンチンのホッケーを独自に分析しました。

試合の動画はこちら!

2020.2.16 FIH Pro League Women アルゼンチン対オランダ

https://fih.live/

【アクセス方法】HOME > FIH Pro League Women > 2020.2.16 Argentina vs Netherlands

分析の結果、以下の3つの特徴があることがわかりました。

特徴① プレスラインの高さと、自陣の厚い守り

  • 敵陣深くからフルプレスを積極的に仕掛け、ガンガン走る
  • 自陣サークル前は人数をかけて厚く守り、相手に決定的なシーンを作らせない
ハイプレスによる高い位置でのボール奪取 (0:35:49~0:36:12)

この試合では、両チームとも高い位置でプレスを掛け合っていた。
その中でもアルゼンチンのハイプレスの特徴は、FW3人とMF4人が連携しオランダのフルバックに対してプレッシャーをかけている点である。
このシーンでは、アルゼンチンのMFがオランダの右サイドハーフをマークすることで、相手DF3人に対してFW3人がそれぞれマークしている。
FWが相手DFへの速いプレスをかけて、相手の選択肢を絞らせることに成功している。
また、相手MFが下がりながらボールを受けざる負えない状況を作り出している。

特徴② ハイプレスに対する回避方法

  • 自陣ゴール付近でも自信を持ってボールを回し、相手を翻弄
  • フルバックからの強烈なヒットで一気に前線へロングフィード
ハイプレスを巧みにいなすアウトレット (1:26:27~1:25:58)

相手にハイプレスされている時のアルゼンチンのアウトレットは、フルバック2枚がエンドライン際にポジションを取り、サイドハーフ、MFとトライアングルを形成している。
このシーンでは左サイドラインから相手のプレッシャーを受けるが、エンドラインにいるフルバックにボールを後ろに戻し、右サイドへつなぐ。
アルゼンチンDF#2ソフィア・トッカリーノ のところでオランダFW2人に詰められるも、短いパスを繋ぎつつ再び左サイドへ展開する。
フリーとなった左サイドハーフから余裕をもって、前線へ浮き球のパスを送り敵陣へ侵入に成功している。
このようなエンドライン際のフルバックを使いながらハイプレスを回避するアウトレットのパターンは女子アルゼンチン代表の特徴である。
他のシーンではフルバックからのロングヒットにより陣地挽回をするシーンも多く見られた。

特徴③ FWのスピード突破

  • サイドからドリブルを仕掛け、高速ドリブルで相手を華麗に抜き去る
  • 狭いスペースでも相手に奪われない高いキープ力
  • 個人プレー中心の攻め方であり、スペースがなく数的不利の状況における打開が課題
素早いリスタートから繋ぎFWのスピード突破 (1:07:07~1:07:18)

アルゼンチン#12デルフィナ・メリノ は素早いリスタートでプレーを再開させ、#11カーラ・レベッチ へパスをつなぐ。スピードを落とさずパスを受けると、サークル外で相手DFをチョップ(スティックでボールを斜め上から叩きつけ、その反作用を利用して浮かす技術)で軽やかにかわしサークルイン。
エンドラインに沿うようにドリブルすると、相手の足にボールを当て得意のペナルティコーナーを獲得する。
アルゼンチンは、前半からロングパスを中心とした攻撃と高い位置からのフルプレスを繰り返していた。
オランダに疲れが見え始めた後半以降は、アルゼンチンFWのスピードに乗ったドリブルで相手DFを抜き去るシーンが目立っていた。

日本はどのように戦うべきか

女子アルゼンチン代表の愛称は、”Las leona(雌ライオン)” で、劣勢に見えても粘り強く戦うスタイルからこの愛称が付いています。
私たちの分析結果からも、まさしくその愛称通りの印象を受けました。
自陣サークル内へ多くの侵入を許すも、最後の最後のところでしっかりと守り切り、ロングパスを中心に、相手陣内へボールを運び、FWのスピードとテクニックで一点突破し、ペナルティコーナーで得点を決めていました。
我が子を集団で守り、狩りでは相手に忍び寄り一瞬の隙をついて獲物を仕留める。まさに”雌ライオン”のようなチームと言えるでしょう。
また、アルゼンチンの国民性として「気の強さ」がよく挙げられます。
今回の試合の中でも、何度か審判たちに激しく言い寄るシーンがあり、感情を剥き出しに自己主張をしています。選手に囲まれる審判も困惑の表情を浮かべていました。
そういうところも、”雌ライオン”という愛称がついた理由かもしれません。
そんな女子アルゼンチン代表を相手に、日本はどのように戦うべきなのでしょうか。
そのヒントを私たちなりに考えてみました。

①スペースをなくし数的優位で守る

女子アルゼンチン代表のFWのスピード、テクニックはとても高く、スペースを見つけると一気にサークル付近まで侵入を試みる。その反面、個人プレーが目立っていた。
簡単に言ってしまえば、スペースをなくし、数的優位を作れれば、相手を抑えることも可能ということである。
そのためには、FW、MFが自陣まで戻ってきて守備の人数を増やすハードワークが必要となる。

②相手陣内で積極的にプレッシャーをかけ続ける

ハイプレッシャーの相手には、アウトレット&ロングパスによる回避を得意としている。ただ、データを見る限り、ロングパスからの攻撃は単発に終わっており、相手の脅威になっていなかった。
その点を考えると、あえてロングパスを出させるように、高めの位置から積極的にプレッシャーをかけた方が、ボールを奪いやすいだろう。
今回の試合では、世界ランキング1位のオランダをもってしても、アルゼンチンの自陣の厚い守備に苦戦し、得点には至らなかった。いかに、守りが手薄な時に攻めきるかがポイントであり、高い位置でボールを奪い、ショートカウンターでチャンスを作ることが有効と考えられる。

③相手に気後れしない

今回の試合の中で、アルゼンチン選手の気の強さ、自己主張を大切にする姿勢が垣間見えた。
内気で気を遣う温厚な性格といわれる日本人の国民性とは、真逆の存在かもしれない。
もし、相手が感情をあらわにしたり、何か主張してきたときに、いちいち気後れしていてはプレー面で一歩出遅れてしまうということも考えられる。
気後れしないためにも、相手の特徴を理解しておくこと、そして自分たちのプレーに自信を持って挑むことが重要となる。
日本代表は強いハートを持って挑んでほしい。

最後に

最後まで記事を読んでいただき、ありがとうございます。
女子アルゼンチン代表のホッケーについて理解は深まったでしょうか。
今回、私たちは過去の試合から1試合を抽出し、ゲーム分析によってその特徴を導き出しました。
しかしながら、戦術は対戦相手に合わせて変えるものであり、日本が対戦する際に当記事の内容がそのまま当てはまるとは限りません。その点はご了承いただければと思います。
最後に、このような企画を進めるにあたって、メトロ東京ホッケー&アスリートクラブ以外の方々にも多大な協力をいただきました。この場を借りて感謝を申し上げます。
引き続き、オリンピックまでの残り1年かけて、日本の対戦国を知るキッカケとなる情報を提供していきます。

アルゼンチンを徹底分析! 記事一覧

メトロアナリストレポート一覧

これまでのメトロアナリストレポートは、こちらから覧いただけます。

活動報告一覧

普及事業クラブ運営子ども育成その他の活動
PAGE TOP