<男子>スペイン代表を徹底分析! Vol.2 スタッツ編 その1:ゲーム展開

来年の東京オリンピックにおける日本の対戦相手を紹介していく企画「メトロアナリストレポート ~ホッケーを10倍楽しむ!オリンピック出場チームを徹底分析!!」を進行中です。

前回(Vol.1 サマリー編)に続いて、2020年FIHプロリーグ男子のアルゼンチン対スペイン戦のゲーム展開から男子スペイン代表の特徴を読み解いていきます。

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この試合を見て欲しい!!

今回は「2020.2.7 FIH Pro League アルゼンチン対スペイン」を元に、スペインのホッケーを独自に分析しました。
この試合がどのような内容だったのかを振り返ってみましょう。

世界ランキング9位のスペインは、同4位のアルゼンチンと2/7にアルゼンチンの首都ブエノスアイレスでFIHプロリーグ2020のリーグ戦を行った。
スペインは本試合が同リーグ第5戦目で未だ勝利なし、アルゼンチンは初戦かつホーム戦であり、両チームとも是非とも勝利が欲しい一戦である。

1Q開始早々、アルゼンチンFWによる前線からのアグレッシブなプレスで、スペインのフルバックの判断が一瞬遅れる。アルゼンチンはその機を逃さずボールを奪取すると、そのまま数的優位を活かしたショートカウンターにより、難なくサークルイン。GK前に構えた#9カセーラのリバースタッチが見事に決まり先制0−1。ボール奪取からわずか7秒でゴールを奪う電光石火の攻撃であった。
1Q13分、パスワークで徐々にペースを取り戻したスペインは、自陣右サイドから中盤スペースにドリブルを仕掛けると、上手くDFのマークを外した#13、#11がパスを繋ぎ、ゴール前の#9イグレシアス のリバースタッチを演出。同点に追いつく1−1。

2Q10分、一進一退が続く中、アルゼンチンDFからのロングパスがサークルトップでフリーとなっていた#9カセーラ へこぼれ、ゴール右隅にプッシュで流し込み、アルゼンチンが勝ち越し1−2。#9カセーラ は2点目。
しかし、ハーフタイム間際の2Q14分、ペナルティコーナーを獲得したスペインは、#25ケマーダ のフリックショットが炸裂、またも同点に追いつく2−2。
後半に入り、スペインはボールポゼッションを高めてチャンスを伺うが、なかなかシュートまで持ち込めない。一方アルゼンチンは3Q11分、左サイドから攻め込みペナルティコーナーを得る。DFのフライングにより1人守備を失ったスペインに対し、アルゼンチンは#13トリーニ の低い弾道のプッシュがスペインGKの股下を抜き、再度勝ち越しに成功、2−3。

4Q9分、逃げ切りを図るアルゼンチンはペナルティコーナーを獲得、3点目と同じく#13トリーニ が低い弾道のプッシュをゴール左下に叩き込み、2点差をつけて勝負あったかと思われたが、ファーストシュート前にボールがサークルの外に出ていないという判定で幻のゴールとなる。
アルゼンチンは失意のまま集中力を欠き、直後の4Q10分スペインにペナルティコーナーを許す。スペインの#25ケマーダ が強烈なフリックショットを放ち、一度アルゼンチンGKに弾き返されるも、#21ルイス がこぼれ球をリバースボレーで叩き込み、再度試合を振り出しに戻す3−3。

勢い付くスペインは、試合終了間近の4Q14分にもペナルティコーナーを獲得。#25ケマーダ がフリックショットをゴール右上に突き刺し、遂に逆転、試合を決めた4−3。#25ケマーダ は4点中3点に絡む活躍で、マンオブザマッチに選出された。
両チームともパスワークでリズムを作りながらゴールに迫る、似た者同士の戦い。最後に勝敗を分けたのはペナルティコーナーの決定力であった。

スタッツデータを読み解く

スタッツ

両チームともに23m侵入まではほぼ互角の戦いであるが、23m侵入からのサークル侵入率は、スペイン20%、アルゼンチン39%で、スペインが劣勢である。
しかし、サークル侵入後のシュート率(ペナルティコーナーとフィールドを合わせたシュート)は、スペイン100%、アルゼンチン57%となり、スペインがサークル内での勝負強さを示すデータとなっている。

ペネトレーショングラフ

ペネトレーショングラフは、1試合における相手陣地への侵入の深さと時間を表している。
1、2Qは両チームとも単発の攻撃が繰り返され、お互いに点を取り合う互角の戦いを繰り広げている。
3−2でリードしたアルゼンチンは、4Qにペナルティコーナーを獲得するも、決めきれない。
ここがターニングポイントとなり、流れを掴んだスペインが3本のペナルティコーナーから2得点し、逆転に成功した。

得失点シーンを分析してみた

得点シーン、失点シーンを一つづつピックアップし、どのようなプレーが行われていたのかを分析しました。

得点シーン 1得点目に注目

巧みなパスワークとそれぞれの個性を活かしたゴール(1Q 13:05

自陣パス回しから、50yd付近でボールを受けたスペイン#23 ROMEUは、アルゼンチンのプレッシャーを受けながらも、#21RUIZ とのコンビネーションプレーでボールを確実に繋ぐ。
前を向いてトラップした#23 ROMEU はアルゼンチンDFをドリブルで引き付け、サークル中央へスルーパス。
パスを受け取った#11 OLIVA は、ワンタッチで前を向くことに成功し、ゴール前へセンタリング。
#9 IGLESIAS は後ろからのアルゼンチンDFのプレッシャーに負けずにタッチシュートを成功させた。
スペインの特徴であるパスワークが印象的なシーンである。

失点シーン 2失点目に注目

守備陣形の崩れとマークの甘さからの失点(2Q 05:03)

アルゼンチンのパス回しに対して、自陣まで引いて守るスペイン。
アルゼンチン#22 REY へのマークが甘くなっていたところにパスが通り、前を向かれてしまう。
すかさずスペインのボールエリアにいる3人はプレッシャーをかけるが、ボールを奪うことができない。
アルゼンチンはスペインの守備陣形が崩れて隙を見逃さず、縦のスペースへロングパスを通す。
サークルトップ付近にこぼれたボールは真ん中でフリーになっていたアルゼンチン#9 CASELLA へと繋がり、そのままシュートを打たれて失点してしまう。
スペインは守備陣形の乱れを素早く修正し、スペインDFがアルゼンチン#9 CASELLA へのマークを厳しくできていれば、失点を防げたシーンであった。

まとめ

今回はゲーム展開を中心に分析しました。

スタッツデータを見ると、サークル侵入はアルゼンチンの方が多く、スペインが終始押されている様子が伺えます。
「サークル侵入後のシュート数」「ペナルティコーナーの決定力」が勝り、スペインが勝利しました。

決定力が目立った半面、
スペインの守備の甘さがところどころに見受けられ、結果的に失点に繋がりました。
スペインの国民性として「マイペース」「自由奔放」という特徴があると一般的に言われます。
もしかすると、その国民性が失点シーンのような守備のマークミスに繋がったのかもしれません。

次回は、アナリスト担当によるゲーム分析結果から男子スペインの勝因について読み解いていきたいと思います。

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